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「vibes=バイブス」
テンション、気分、雰囲気、ノリ。
CASE①
ある夏休み、その日は外出する日であった。
当日、子ども達全員に希望を訊く。
A、鞍ヶ池公園
B、碧南水族館
朝一番、ゆうこ(仮名)が一番に来所。(※名前はすべて仮名)
さっそく希望を訊く。
「うちはAの鞍ヶ池がいい」
「了解」
最初の1票がホワイトボードに記載される。
すぐに同級生のあつこが来所した。
「あつこちゃん、出かけるならAとB、どっちがいい?」
「えーと・・、私は・・」
あつこは逡巡する。
ホワイトボードとゆうこをちらりと見比べる。
「Aにする」
2票入る。
次にまたも同級生のともみが来所した。
「ともみちゃん、さっそくだけど、AとBどっち?」
「うーん、ともみは、えーっと・・・」
同じく逡巡する。
「ちなみに、ゆうちゃんとあっちゃんはAの鞍ヶ・・・」
「ともみはA」
3票目。
子ども達が続々と来所する。
まりこが来た。
ホワイトボード右側を見上げる。
「Aがいい」
続々と票が入る。
みなみからは質問があった。
「ゆうこちゃんはどっちだった?」
「Aだったよ」
「じゃあ、みなみはA」
「みなみちゃん、ゆうこちゃんがAにしたからって、べつに合わせなくてもいいんだ・・・」
「違うよねえ!ゆうちゃん、違うよねえ?」
みなみは目ん玉をまん丸にして抗議する。
「みなみが自分で決めたんだよね!」
「そうだよ!」(ゆうこ)
結果、Bはわずか2票、圧倒的多数でAの鞍ヶ池に決定することとなる。
運営上、若干の世論操作をした感は否めない。
しかしこのバイブスを止めることは誰にもできなかったであろう。
CASE②
土曜日、買い出しのため、私は100均にあかり(1年)とさくら(2年)を連れて行った。
大量のスナック菓子をセルフレジに運ぶ。
どちらがバーコードを通すかで不穏な空気になりかける。
お年寄りから「可愛いご姉妹だこと」と声を掛けられたが、笑って誤魔化した。
あみじゃが、おっとっと、スティックポテト、多種多様なスナックを持ち帰った。
カラムーチョも買った。
小1のたくやから、強く要望があったからである。
おやつの時間となった。
行列ができる。
ひなた(1年)
「グミにする」
「はい、ひとつ」
さや(1年)
「あみじゃが」
「はい」
まゆ(1年)
スナック菓子の山をかき分ける。
「えっーと、カラムーチョにしよ」
「はい」
「おれはこれ!」
たくやは当然、カラムーチョである。
ひなた(1年)
「うーんと、どうしようっかな。」
ひなたは頭を掻いた。
「うーんと、やっぱカラムーチョ」
「・・はい」
さや(1年)
「そうだなあ・・・。カラムーチョかな」
「・・。辛いよ」
「そんなの知ってる」
箱の中を確認した。
カラムーチョはあとひとつだった。
列には、みなみ(3年)、最後尾に、はるか(1年)の2名が控える。
「カラムーチョ」
みなみは言った。
無意味とわかりながら、私はお菓子の箱に手をつっこんだ。
「ちょ、ちょっと待ってね・・」
じっと順番を待つ、最後尾の1年はるかに声をかける。
「はるかちゃんは何がい・」
「カラムーチョ」
手が震えた。
3年みなみが私の目をじっと見つめる。
「カラムーチョがいい」
「うーむ、そうだなあ、あと何個だったかなあ・・・」
「カラムーチョがいい」
「すごく辛いよ」
「カラムーチョがいい」
「まあ、みなみちゃんはもう3年生•・」
「カラムーチョがいい」
「スティックポテトも美味し・」
「カラムーチョがいい」
私はのろのろと立ち上がり、冷蔵庫をあけた。
意味がないとわかっていながら。
そしてしばらく茫然と、閑散とした冷蔵庫の中身を眺めていた。
私は冷蔵庫の扉を閉め、そして振り返った。
目の前にははるかが立っていた。
そして私の目に映ったのは、最後尾に並ぶみなみの姿だった。
私はみなみの顔を見た。
瞬きひとつしないその目は、どこか空中の一点を凝視していた。
私は最後の一袋を、はるかに手渡した。
むしゃむしゃむしゃ。
子ども達の咀嚼音が響く。
私は最後に待つみなみの手に、そっとスティックポテトを渡した。
みなみは最後にポツリと呟いた。
「カラムーチョがよかった」
この不可思議なvibes。
人はこれを「連続的同調性バイブス」と呼ぶのである。
